大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和24(オ)41 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人大野一作、同鍛治利一の上告理由第一点について。

被上告人が原審において昭和二一年二月五日本件家屋につき期間を定めず賃料一

ケ月金一八円毎月末日に支払うことの賃貸借契約が被上告人とDの代理人であるE

との間で成立した旨主張したことは所論のとおりである。しかし、被上告人は、右

主張の外訴外Fが昭和二〇年七月八日応召し同月一三日その家族が引越後被上告人

が本件家屋全部を使うことになつて家賃は家主の管理人Gに支払い同年一〇月から

店舗の一部を改造して化粧品雑貨商を開きその後同年一二月右Gの長男Eが復員し

て本件家屋を管理するに及び同人が右家屋の家賃は一ヶ月一八円に上げたいといつ

たので被上告人はこれを承諾した旨をも主張し、要するに被上告人はDとの間の賃

貸借関係に基き本件家屋を占拠しているのであるから不法占拠ではないと主張した

ものであること明らかである。それ故、被上告人はFと被上告人間に賃借権の譲渡

のあつた事実を否定するものでないばかりでなく、寧ろその譲受の事実をも併せ主

張したものと認めるを相当とする。されば、原判決が所論指摘のごとく判示したか

らといつて当事者の主張しない事実に基き裁判をした違法があるとはいえない。論

旨は、その理由がない。

同二点について。

原判決は、挙示の乙第一号証、各証人並びに被告本人訊問の結果に基き判示賃借

権譲渡の事実を認めたのであつて、その認定には証拠上の違法は認められない。そ

して、原判決の認定したところによれば、本件家賃の敷金は、Fの家族において被

上告人の内縁の妻Hの希望を容れて結局そのまゝにして置いたのであるから、Fの

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家族が南部に差入れてあつた敷金を受取つて行くといつたからといつて、賃借権を

譲渡した事実のないことを示すものとはいえないし、また、敷金は賃貸借契約の要

素ではないから、敷金をそのまゝにして置いたからといつて必ずしも賃借権の譲渡

がないとはいえないし、しかも賃借権の譲渡は無償を妨げるものではないから、敷

金譲受の代償金を支払つた事実がないからといつてその一事を以て賃借権の譲渡が

なかつたともいえない。それ故、所論は、結局原判決が適法になした事実の認定を

争うに帰するから、採用することはできない。

同三点について。

しかし、原判決挙示の証拠並びにこれによつて認め得べき原判示のごとき種々の

事実就中Fの家族移転後は本件家屋に被上告人の標札だけが出ていて一見して被上

告人の家族のみが居住することが分る状態であつたこと、昭和二一年二月五日被上

告人が本件家屋で飲食店を開業しようとすること並びにこれについて必要な家屋の

改造をすることを上告人の前主たる家主の管理人において承諾したこと等によれば

賃貸人に代つて承諾をする権限をもつていた本件家屋の管理人において暗黙裡に判

示賃借権の譲渡を承認したとの原判示の事実認定を肯認することができ、その認定

には反経験則その他の証拠上の違法は認められない。されば、本論旨も採用できな

い。

同四点について。

原判決の認定が挙示の証拠説明でこれを肯認することができ、反経験則その他の

証拠上の違法が認められないことは、前論旨で説明したとおりである。されば、所

論は、結局原判決の措信しなかつた証言に基き原判決の適法にした原判決の認定を

非難するものに外ならないから、適法な上告理由として採用することはできない。

よつて民訴四〇一条、九五条、八九条に従い裁判官全員一致の意見で主文のとお

り判決する。

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最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 斎 藤 悠 輔

裁判官 沢 田 竹 治 郎

裁判官 岩 松 三 郎

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